◆初めに
 
  ALLEND後のお話で、秋の終わり頃のお話です。
 
  祐一は名雪と付き合ってます。
 
  北川と香里は付き合ってませんが、友達以上恋人未満の関係です。
 

北川「うーん、好きなものか〜……」 祐一「簡単だと思ったけど、意外と出てこないものだな…」 香里「そうね……逆にたくさんあって決まらないということもあるし……まあ、誰かさんはすぐにパッと出てきて、    せっせと描いているようだけどね…」 名雪「ねこ〜ねこ〜♪ ねこ〜〜♪ いっちご、いっちご〜♪」 今、祐一・北川・香里・名雪たち、通称「美坂チーム」の面々は美術の授業をしている。 とは言っても今日の授業はまるで幼稚園の園児にやらせるような、至ってシンプルなもので、 あるお題のものを思い浮かべてスケッチブックにデッサンを描けということだった。 そしてそのお題の文字は美術室の黒板にデカデカと書かれていた。
「My Favorite Thing」 ―――好きなもの―――  writen by junpei
それがスケッチに描く為のお題だった。 そんな奇抜な発想を思いついて授業に実行させる折原先生は今年赴任してきた新米の教師だった。 だが、新米とはいえ、なかなか丁寧に授業をするし、時折妙なことを言って生徒たちを笑わせたりと、 いくら美術が下手で興味がないという生徒でも、まるで魔法がかかったかのように徐々に美術にのめりこんでいった。 それは祐一達「美坂チーム」も例に漏れず、折原先生の美術の時間を楽しみにしている節があった。 そんな折原先生が出した今日の課題。 一見簡単じゃないかと思えた祐一・北川・香里だったが、いざ取りかかろうとしてみるとこれが結構難しい。 確かに好きなものを思い浮かべて描くだけなのは簡単だ。 しかし、その好きなものを明確にはっきりと思い浮かべることが出きるかと言われると、なかなか出来ない。 好きなものが多くてどれにしようか、どれが一番好きなものか、考えれば考えるほどわからなくなってくる。 そう、折原先生の授業はこういった変則的なことで生徒の柔軟性を養うことを目的とした 今までにない画期的な授業をする事で生徒たちから人気があった。 ともあれ、そんな折原先生の授業を受けていた名雪を除く美坂チームの面々は「どうしよう」と頭を悩ませていた。 え? どうして、名雪は除くかって? そりゃ、名雪さんはちゃんと…… 名雪「ねこーねこー、いっちごいっちご♪」 ……「好きなもの」が何かわかっているからです…。 香里「いいわね、名雪は…好きなものが何かわかっていて…」 北川「まあ、いつもAランチとか、ねこのシャープペンシルとかを持っているし…」 祐一「まあ、言い代えれば単純なだけなんだろうけどな…」 香里・北川「「言えてる」」 名雪「……もしかして酷いこと言ってる?」 祐一・北川・香里「「「言ってないぞ(わよ)」」」 名雪「うー。なんかあやしいよー」 いつもの馴れ合いの中、折原先生が4人に注意してくる。 折原「おーい、そこの4人。お喋りばっかしてないでさっさと課題をやれよー」 その注意に4人がバツの悪そうな笑みを浮かべて「はーい」と軽く返事を返す。 が、その後の折原先生のお言葉…… 折原「簡単なお題なんだから、今日中には提出してもらうからなー」 その言葉に4人はおろか、クラスメートがどよめいたのは言うまでもない…。 祐一「参ったなぁ……」 北川「今日中って……」 香里「さすがに何か描かないと、拙いわね…」 名雪「ふぁいとっ、だよ」 祐一・北川・香里「「「……」」」 普段とは逆の立場にいた3人は名雪のその言葉に少々むかついたと言う…。 そして、授業が終わって…… クラスの半数以上はスケッチを出すことが出来たが、名雪を除く美坂チームの3人を含む残りのクラスメートたちは 提出することが出来ずの状態になり、折原先生は思いっきり深くため息をついた。 折原「はぁ〜……ったく、自分の好きなものがわからないなんて、お前ら情けないぞ…」 しかし、これはある意味酷な課題だったかもしれない。 最初は「なんだ簡単じゃないか」と思っていた祐一達だったが、小さいころならいざ知らず、心身ともに成長してきた今となっては 迷わず「これが好きなものだ」とはっきり言えるような単純な思考はしていない。 好きだから色々と考える。好きだから辛く、悩んでしまう。好きだから自分を抑えられなくなってしまう。 それに、その好きなものを描いて人に見せるというのは恥かしいという事もある。 単純が故に難しい。 ひょっとしたら、それを見越して折原先生はこんな課題を出したのではないのかとも勘繰ってしまう。 そんな事を考えていたのかどうだか、この美術の先生は「仕方ないな」というような顔であっさりとこんな事をのたまった。 折原「まあ……とりあえず今日出来なかった者は次の授業までに俺のところにデッサンを提出すること。    ただし、罰としてデッサンは2枚描いてもらう。出来なかったら授業一回経つごとに一枚ずつ増えていくからな」 その言葉に「横暴だ」「鬼だ」などと非難轟々の声があがったが、折原先生は全く受け付けずに美術室を出て行った。 〜北川潤の場合〜 北川「ふう……好きなものか…」 北川は真っ白なスケッチブックを眺めながら、自室の机に鉛筆を咥えながら頬杖をついている。 彼には「好きなもの」がいっぱいあった。 中学時代にバスケの試合で逆転劇を決めた時のバスケットボール。 行きつけのラーメン屋のあっさりした塩ラーメン。 シリーズとして出ていて根強い人気のRPG。 好きなアーティストのCDやサイン入りポスター。 バイト先の喫茶店のマスターが淹れてくれた珈琲。 とりあえず、その中で簡単なバスケットボールと珈琲の絵をスケッチブックには描き、なんとか上手く描けた。 それで課題は完成のはずだった。 しかし、 北川「でも、なんか違うよな〜……」 今思い浮かべたものは確かに「好きなもの」であると北川自身認めている。間違いない。 だけど、それらを描いてみて北川自身それが「一番か?」と問われると、そうではない。 「一番好きなもの」 それは北川自身よくわかっていることだった。 ただ、その「一番好きなもの」を描いて恥かしい思いをしたくないから描かないだけなのだ。 まあ、課題を描いているうちにノッテきたというのと、描いてもそのページだけ破ればいいのだからという考えがあったのだろう。 北川はその3枚目の白紙に「一番好きなもの」を描いてみようと思った。 〜美坂香里の場合〜 香里はリビングの中、モデルとスケッチブックを交互に見つめていた。 香里「よし、これでいいかな…」 スケッチに影を落とし入れ、香里はふうと一息をつく。 栞「えう〜……疲れました〜……」 スケッチブックの先、そこにはストールを巻き付けてソファーでじっと座っていた妹の姿があった。 どうやら、栞をスケッチのモデルに使っていたようだった。 栞「いつもはこっちがモデル頼むのに、逆に私がモデルになるとは思ってもなかったよ」 香里「ごめんね。スケッチの題材が『家族』だったから、どうしても栞をモデルにして描かないといけなかったのよ」 本当は題材は「好きなもの」だったのだが、それを栞に言うのは香里自身とても恥かしかったので、 香里は題材を「家族」ということにして仕方なく描かないといけないのだということにして栞にモデルを頼んだのだ。 それでも、栞は嬉しそうにモデルになることを快諾してくれ、そして疲れたという割には今もなお喜んでいる。 栞「えへへ……」 それが何だか変だなと思った香里は少し引き気味な感じで栞に問いかけた。 香里「な、何よ? さっきからずっと嬉しそうな顔をして、あんた少しおかしいわよ…」 栞「そんな事いうお姉ちゃんなんて嫌いですっ! ……あ、違った……そんな事はないです…」 香里「は? ちょっと、一体どうしたのよ? さっきからずっとニコニコしてて、スケッチを描く上では助かってたけど、    何か嬉しい事でもあったの?」 栞「はい、ありましたよ。とても嬉しいことが…」 香里「へぇ……で、その嬉しい事って何なの?」 そう訊ねると、栞は少し顔を赤くして、巻いていたストールを顔の方へ持っていって口元を隠して上目遣いで答えた。 栞「えっとね……お姉ちゃんが『家族』と聞いて真っ先に私のことを考えてくれたんだなぁ…って思ったら、   嬉しくて、とても嬉しくてね……何だか泣きたい気持ちになってきちゃって、それを我慢しようとしても口元が緩んできちゃって…」 香里「あ……」 そこまで聞いて香里は栞がどうしてずっと微笑んでいたのか納得した。 一度は否定したものの、大好きな妹を見捨てる事が出来ず、仲の良い姉妹に戻った二人。 そして、奇跡により栞の病気は完治して、今では平穏な日々を過ごしてきたけど、それに慣れて忘れていたようだ。 あまり口に出しては言わないけど、栞の事を「妹」として、「家族」として大切に想う事を…… まあ、言わなくても勘のいい栞の事だからわかっているとは思っていたけど、 改めて思い起こしてみると栞に向かってそういう事を面と向かって言った事がない。 恥かしいと思って「好きなもの」を「家族」ということに変えて言ってみたのだけど、どうやらそれは栞にしては同じだったみたいで、 栞と同様に香里も顔を赤くしていた…。 それから数分後、香里は居心地が悪くなって自室に逃げ、ふうと気を落ち着かせる。 実を言うともう一つの「好きなもの」を描く方が香里自身恥かしいと思っていたのだけど、 まさか栞を描いててこんなに恥かしくなるとは思ってもみなかったのだ。 香里「参ったわ……こんな調子でアレを描けるのかしら…」 まだ熱い頬を抑えながら机の引き出しから縦15cmの横6cm、そして横幅と同じぐらいの高さの少し細長い箱を取り出して開けてみる。 その中には小さな赤茶色のバイオリンの模型みたいなものが入っていて、香里はその模型を取り出した。 それは小物入れで、上の部分が蓋になっていて、中には小物が入るように仕切りがしてあり、赤い布で装飾を施されている。 香里「まあ、彼が見ることはないだろうしね…」 そう言って小物入れの蓋を開ける。 ♪〜♪〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜…… 綺麗な音色が部屋の中に響く。 誕生日に貰った彼からのプレゼント。 彼の好きな音楽で、確か「哀しみの向こう側」という曲のオルゴール。 あの時は強く意識したことがなかったけど、今ではその気持ちが友達以上のものになっている事がわかる。 最初聞いたときは綺麗な音楽ということしか考えず、何となく歌詞が気に掛かったあたしは レンタルビデオ屋でCDを借りて歌詞を見ながら曲を聴いて驚いた。 その歌詞の意味は彼があたしを気遣う心、そのままを映したかのような曲で、 それを知った時から彼を見るあたしの目が変わっていった。 何気ない彼の仕草、優しさが気に掛かり、徐々に心は苦しくなって、あたしは彼を好きになっていた…。 でも、あたしは恥ずかしさからそんな想いを見られたくなくて、授業の最中にこのオルゴールを描くことはしなかった。 だけど、先生に提出するだけなら、彼はおろか、名雪達にも見られる心配はない。 だから、あたしはこのオルゴールを描いてみる事にした。 まだ言えない気持ちを形にして残しておきたかったから… 〜相沢祐一の場合〜 自室の机の前、祐一は腕組みをしながら椅子にもたれて悩んでいた。 祐一「好きなもの……好きなもの……」 天井を眺めつつ、好きなものが何かを思い浮かべる。 しかし、思い浮かべようとしても何も出てこなく、祐一は「は〜」と溜息をついた。 祐一「今まで、何やってきたんだろうな……俺……」 元々祐一自身、生来の性格は物臭で面倒くさがり屋な為、部活動は帰宅部、バイトというものもしたことがないし、 趣味と言う趣味は持ち合わせていないし、何かに熱中するということ自体殆どない。 こんな自分に誰かが「好きなものは何か?」と聞かれたら、「別に」の一言で済んでしまうだろう。 祐一「は〜……一枚でも描けるのかどうかわからないよな…」 何とも無作為な時間を過ごしてきたものだと祐一は呆れながら自己嫌悪に陥る。 祐一「どうしようかな…」 暗い気持ちを抱えたまま、祐一はなんとなしに外の景色を眺める。 まだ秋とはいえ、ここは雪の街だ。 既に外は寒気のせいか、窓には霜がついていた。 祐一「もうすぐ冬か…………そういや、雪を好きになったのは今年からだったな…。    七年前、あゆが木から落ちて、悲しみから全てを忘れようとして、雪を嫌うようになって……」 その時の状況を思い浮かべて少し苦い気持ちになったが、祐一は全てを過去として受け止められた。 それは…… 祐一「今年、俺はこの町に戻ってきて…色んな出会い、色んな奇跡、色んな気持ちを知ったんだよな…」 まだ時間にすれば半年が過ぎたぐらいだが、祐一にとっては随分昔のことのように思える。 懐かしむように冬の出来事を思い出し、その中で祐一はふと、ベッドの方に目を向けた。 正確にはベッドの傍に置いてある、ある物を見ていたのだが…… 祐一の傍に置いてあるもの。いつも眠たそうな声で自分を起こそうとするもの。 自分の代わりに彼女の心に呼びかけたもの。彼女と自分を再び繋げてくれたもの。 そして、祐一が雪を好きになったもの…… 祐一「……そうか!」 それを見ているうちに祐一は思い出した。 自分が何を「好き」なのかということを…… 祐一「全く、俺としたことがこんな近くにあるものを忘れてたなんて、ホント情けねえよな…」 何も無いわけじゃない。祐一の傍にいた彼女。 いつも寝起きが悪くて、イチゴジャムに目がなく、猫を見かけると発狂して追いかけ、ボーっとしている彼女。 いいところも悪いところも彼女の全てが祐一は好きだった。 そんな彼女と自分を繋ぐもの全てが祐一は好きだった。 それがわかった瞬間、祐一は椅子を元に戻してスケッチブックに手を伸ばした。 祐一「よし、描くぞ!」 まず初めにベッドの傍に置いてある目覚ましを、そしてこれを描いた後に祐一は外に出ようと思った。 彼女が待っていた場所、祐一が彼女を待っていた場所に…… 〜そして、後日〜 残りの生徒全員がデッサンを提出し終え、それを見ていた折原先生は個別に生徒を準備室の方に 呼び出しながらスケッチブックを返していった…。 折原「北川、なかなか良い絵だったぞ」 北川「そ、そうですか? バスケットボールと珈琲の絵なんて簡単なものだったんですが…」 折原「ああ、その二つも良かったんだが、特に三枚目の絵がな……」 北川「三枚目? 俺、何か描いて………ああっ!」 北川は失念していた。 三枚目のデッサンを描いているうちに眠くなっていき、気がついたら遅刻ギリギリまで寝過ごし、 慌てて学校に出ていき、その慌てた調子で三枚目のデッサンを破らないまま提出してしまったことを…… 北川の顔から血の気が引いてきた。 折原「しかし、お前が美坂を……」 北川「わ〜〜っ! せ、先生、どうか、どうかその事は内密に!」 慌てて土下座をして、その事を秘密にしてもらおうとする北川に折原先生はニヤッと 不敵な笑みを浮かべながら北川の肩にポンと手を乗せる。 折原「そんな事しなくても、言ったりしないさ。気持ちは自分の口で伝えることに意味があるんだしな…。    応援しているぞ、北川…」 北川「せ、先生……」 折原先生の真意を知らない北川はその言葉に痛く感動し、尊敬の眼差しで折原先生を見ていた。 折原「……で、一つ聞きたいんだが…」 北川「はい?」 折原「お前、美坂に何かプレゼントを渡したか?」 北川「プレゼントですか? ええ、あげましたよ。オルゴールが入っている小物入れですけど……それが何か?」 折原「そうか…いや、何でもない……じゃあ、行っていいぞ」 北川「は、はぁ……」 折原先生の質問の内容が気に掛かった北川だったが、これ以上ここにいて自分の恥ずかしい気持ちを 晒されたくないと思って準備室を出ていった。 折原「美坂。この小物入れは誰かから貰った物か?」 香里「え、ええ、そうです。妹から貰ったものですけど……」 先生の問に香里は一瞬たじろぎそうになったが、すぐに平静さを取り戻して妹がくれたものだと いうことにしてこの場を切りぬけようとしていた。 しかし、この小物入れの本当の送り主が誰かを知っていた折原先生は「そうか」と言ってまた質問してきた。 折原「この小物入れ、大切だと思えるか?」 香里「は? え、ええ、とても大切なものです……大好きな人から貰った大切なプレゼントですから…」 その答えに折原先生はまた「そうか」と言って、一人で何かを頷いた様子だった。 それが気に掛かった香里だったが、これ以上この小物入れについて詮索されるのは避けたかった為、 そそくさと準備室を出ていった。 そして、名雪が呼ばれ、次は祐一の番となったが、入れ替わりに出てきた名雪の様子がおかしい。 祐一「名雪、どうした? 顔が赤いけど…」 名雪「……え? な、何でもないよっ! わ、わたし席に戻らないと……」 そう言って名雪はそそくさと慌てて自分の席に戻っていった。 祐一「?」 祐一は「何なんだ?」と訝しげに名雪を見ていたが、折原先生が自分を呼ぶ声にその疑問を追い続けられなかった。 そして、準備室に入って開口一番に先生が言った言葉は…… 折原「お前ら、本当に仲がいいんだな…」 祐一「は?」 折原「いや、お前の描いた絵と水瀬の描いた絵な、実はまったく同じ物で、    まるで示し合わせて描いたみたいだな〜と思って、水瀬に見せてやったんだ…」 祐一「え? 俺の描いた絵と名雪の絵が同じ、ですか?」 折原「ああ、目覚し時計とどこかのベンチの絵、二人とも全く同じ物を描いていてな、    水瀬が言うには『思い出の品物と思い出の場所です』ということだったんだが…」 祐一「ちょ、ちょっと待ってください! 確か、名雪は前の授業でもう課題を提出してて、    内容は猫とイチゴの絵で一枚だけしか描いていたんじゃなかったんですか?」 折原「ああ、確かにその絵も提出されていたんだけどな、お前が提出した後で水瀬がやってきて    『これもお願いします』と言って別のスケッチブックを持ってきて提出していったんだ…」 祐一「どうして、そんな事を…」 折原「さあな……本人曰く、『一番好きなもの』だということらしいが…」 祐一「!」 その言葉に祐一は慌てて準備室を出ていき、美術室に戻るが、目当ての彼女がいない事に気づくと、 「名雪ー」と大声で彼女の名を呼びながらそのまま美術室を出ていき、追いかけていった…。 折原「おいおい、スケッチブックどうするんだ………って、……全く、若いっていいね〜……」 残された祐一のスケッチブックをパタパタと靡かせて、折原先生は次にスケッチブックを返す生徒の名を呼んだ。 祐一を除く全員にスケッチブックを返し終え、その日の授業が終わり、折原先生は今回の結果について考えてみた。 とりあえず絵の出来に関しては言うことは無いが、それ以上に得たものは大きかった。 誰が何を好きで、誰が誰を好きなのか、それらを知ることが出来た。 折原「とりあえず、うまくいくといいけどな…」 その中で知った男女の微妙な関係がうまくいくようにと願いつつ、折原先生は家路に着くことにした。 さすがに雪の街というだけあって、晩秋の夜は東京の冬と同じぐらいに冷たく、夜空には星が綺麗に光っている。 そんな星空を眺めているうちに、折原先生―――浩平はぽつりと呟いた。 浩平「……今度の休日にでも帰るかな…」 自分で考えた授業でまさか生徒たちに感化されるとは思ってもみなかった浩平は、 今は傍にいない、遠く離れた故郷にいる彼女に逢いたいと、感傷的になっていた。 折原「聞いて、みるかな…」 呟いて出た言葉に浩平の気持ちは大きくなっていて、上着のポケットから携帯電話を取り出し、 電話帳から彼女の名前を探して電話をかける。 突然戻ってくると知った途端、彼女はどんな顔をするのだろうか? 携帯越しではその顔は見れないが、きっとそれは浩平が思っていた通りのもので、 浩平が好きなもので…… 折原「あ、俺……実は今度の休み、そっちに帰ろうと思うんだけど…」 What's your favorite thing?―――――あなたの好きなものは何ですか?――――― <後書き> どうも、久々に投稿SSを書いたjunpeiです。 えっと、半年以上も待たせてしまって申し訳無いです。 「美坂チームの授業風景」ということで書いてみましたが、誰かがメインというわけでもないので、今回は三人称形式です。 あと、とりあえず普通の授業風景というのも面白くないと思ったので美術の授業で特殊な設定にしようと思いました。 作中に出てくる折原先生はまあ、ご存知の「1」の主人公です。 とはいえ、ゲームやったことないので、性格があっているかと聞かれると 返答に困りますが……(苦笑 とりあえず、Kanonキャラ以外のキャラを使いたかったので先生役にして、 遠恋中ということにしていますが、カプは皆さんの好きな人にしておいてください。 junpeiは瑞佳が好きですが……(w それと、今回のSSは美術の風景ですが、junpeiは美術が滅茶苦茶苦手です。 日記やBBSにも書いてある通り、通信簿はいつも「2」で、はっきし言って栞並に酷いです。 (そんな事言うjunpeiさん、嫌いです!) まあ、「ここが違う」とか、「もう少し塗り方とか美術のことを詳しく」などと言われても 多分、返答できませんのであしからず(滝汗 とまあ、長々と細く……もとい、補足説明を含めた後書きですいません。 これからも頑張ってSSを作っていきますので、あきゅら君&トレイン君も早く復活して、 新作のSSを読ませてやってください。期待しています。 それではこのへんで、さようなり〜♪
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